カーニバルとパンケーキ

 昨日は、「バラの月曜日(Rosenmontag)」だった。この日は、カーニバルのクライマックスで、ライン川沿いのケルン、ボン、デュッセルドルフ、マインツでは、カーニバルの仮装行列・パレードが行われる。これらの地域では、仕事も休みになる場合が多い。

 11月11日にはじまった「5つ目の季節」が、「灰の水曜日(Aschermittwoch)」に終わる。その前のハイライトが、「バラの月曜日」のパレードだといっていい。「灰の水曜日」の前の6日間は、その地域では「狂騒の日々」とも呼ばれる。ドイツ外務省は「狂騒の日々」をドイツのものだとしているが、それはウソだ。カーニバルに熱狂する地域だけの話だといわなければならない。カーニバルの伝統のないベルリンでは、そんな話は聞いたことがない。

 ぼくはすでに書いたことがあるが、この時期になると、ドイツに生活していることにとても疑問を感じる。こんな国にいていいのかと。毎晩、カーニバルのくだらないショー番組がテレビで放映される。カーニバルのパレードも、「政治的でおもしろい」という人もいたり、「長い冬から春になる市民の喜びを表していていい」という人もいる。「この日は無礼講で、いかに政治を批判しても罰せられないし、批判もされないからおもしろいのだ」という人もいる。しかしぼくから見れば、『単なるどんちゃん騒ぎ』。この時期ベルリンに、『カーニバル難民』が増えるのもよく理解できる。

 もちろん、宗教性のあるカーニバルの伝統を守っている地方の町もある。そこには文化がある。しかしどんちゃん騒ぎをする都市では、その宗教性の伝統がまったく忘れられ、『どんちゃん騒ぎ』が観光化、商業化されてしまっている。

バラの月曜日に友人からもらったシャンペン味のパンケーキ

 昨日連れ合いが、カーニバルどんちゃん騒ぎの地方から今、ベルリンにきている友人からパンケーキをもらってきた。パンケーキは、シャンペン味の変わったものだった。その友人から、カーニバルの「バラの金曜日」に伝統的にパンケーキを食べるのだといわれたという。そういえば、オーストリア・チロル地方出身の友人も昨日、ケーキ屋でパンケーキを食べていた。

 ぼくは、「バラの月曜日」にパンケーキを食べる習慣をまったく知らなかった。正確には、カトリック系の地域においてそういう習慣があるといったほうがいいのだと思う。

 「バラの月曜日」の翌日は「断食の前夜(Fastnacht)」といわれ、その翌日が「灰の水曜日」だ。「灰の水曜日」は四旬節のはじまる日で、四旬節は復活祭(日曜日)の前日(聖土曜日)まで続く。

 四旬節には本来、食事を節制し、祝宴などの祝い事も控える。中世までは、肉どころか、卵と乳製品を食べるのも禁じられていたという。それは、イエス・キリストが受難を負って死んでいくのは人間の罪を贖ためで、そのキリストの苦しみをこの期間に少しでも実体験しようとしたのだという。

 そしてその前に、たらふく肉を食べるのが謝肉祭(カーニバル)。元々は「灰の水曜日」の前日の「断食の前夜」に行われていた。その前にパンケーキを食べるのは、断食に入る前に卵が残らないようにするためだったとか。

 しかし社会は、豊かになって物質文明化した。カーニバルはその結果、現在のように宗教性を失い、どんちゃん騒ぎ化したのだった。

 こうして見るとカーニバルは、ドイツの時代と社会の変化をそのまま反映している。「たかがカーニバル」、「何がカーニバルだ」とバカにできない。反省、反省。

2024年2月13日、まさお

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関連サイト:
ドイツのカーニバル(ドイツ外務省、日本語)

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