ロボット税といいたいところだが

 現行の税制制度では、ぼくたち人間が働いて得た報酬に対して課税されている。これは、人間の労働が課税対象になっているということでもある。

 しかし技術の自動化、IT化によって、人間の労働はロボットなどの機械に代わっていく。これはすでに、何回も指摘したことだ。それとともに、人間の労働できる場が減少していく。課税対象が減り、人間の労働から十分な税収を得ることができなくなる。

 現行の税制制度はまもなく、この問題に真正面からぶち当たることになる。人間の労働がロボットに代わるのだから、人間ではなく、ロボットに課税すればいいではないかと、すでに主張されている。ロボットにロボット税を課税するということだ。当然の成り行きである。

 普通に考えればそうすることによって、現行の税制制度の基本はそのまま維持できるかもしれない。

 しかしロボット税には、大きな問題がある。

 ロボット税は国内税ということだ。各国がそれぞれ、国内においてロボットの『労働』に課税することになる。だが、ロボットに課税しない国が出てくるのは間違いない。そうなると生産工場は、ロボット税のない国に移転されるのは間違いない。

 ロボット税を導入するには、世界各国で統一された制度が確立されない限り、国際競争において不均衡が生じる。しかしロボット税に関して、世界で統一された税制制度を導入するのは、まず不可能だ。実現性はほぼゼロだといっていい。

 となると、ロボットに代わる課税対象が必要になる。しかしロボット税導入の論理からもわかるように、まもなく人間の労働は減少する。課税対象としては不十分だ。すでに現在もそうだが、ものづくりはかなり自動化されている。ものづくりの自動化は今後、3DプリンターやAI(人工知能)が普及するにつれ、ますます加速する。人間の労働がロボットに奪われていく。

 その結果、人間が生産ラインに立つことは将来、ほとんどなくなるといってもいい。

ドイツの未来館FOTORIUMでは、未来の技術、社会、環境などがテーマとなった展示がある。写真にあるようなロボットが、未来社会ではあちこちで見られるようになるのだろうか

 それによって、人間の労働がまったくなくなるわけではない。たとえばものづくりの自動化には、プログラミングが必要だ。プログラミングも将来、AIによって行われていく可能性が高い。しかしAIをプログラミングするのは、人間である。その他にも、生産ラインの監視、管理に人間が必要になることも考えられる。

 人間の労働の需要は、需要をどこか他の分野で創設しない限り、人間の働ける場はますます少なくなる。

 それが、ベーシックインカムを導入すべきだという大きな根拠だ。

 こうした将来の労働環境を考えると、人間の労働はもう課税するべきではないと、ぼくは考えている。

 ぼくは将来、「非営利経済」が拡大してくべきで、現実に将来そうなると考えている。その結果これまで以上に、非営利経済と営利経済が並行して進行するようになる。その状況で、非営利を原則とする労働と営利を目的する労働の両方に同じように課税するのは、不公平ではないかとも感じる。

 それなら一層のこと、すべての人間の労働には一切課税しないのが公平な方法ではないかと思う。

 こういうと、ベーシックインカムを支える財源はどうなるのか、ないではないかと批判されると思う。その課題については、これから順次書きたいと思う。

(2023年4月28日、まさお)

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関連サイト:
ドイツの未来館FUTURIUM(ドイツ語、英語のサイトもあり)

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