考える授業(3)

 授業体験2日目の最初の授業は、12年生の歴史の授業でした。

 ヒンリクス先生がいきなり、授業の課題は古代から中世、現代において国家の定義がどのように変化したかについて考えてみようといいました。ぼくは、何というところにきてしまったのだろうかと思いました。これは、ぼくにもとても難しいテーマです。

 福島県の高校生たちに授業のテーマについて日本語で説明した時も、高校生たちからは、ええ、何てことだと面食らった感じがしました。

 配布されたプリントには、国家が古代からどのように移り変わっていったかが簡潔に書かれています。プリントを読むことで、生徒たちは国家の定義がどう変わっていったかを理解できるようになっていました。

 生徒たちの発言から、国家が人種や民族的な枠組みから政治的な枠組みへと変化していったことがわかります。

 政治的な枠組みにおいて、国家が大きく変化するのはフランス革命でした。それによって、民主化がはじまります。全体で2コマ1時間半の授業において、フランス革命が何年に起こったかと年号が出てきたのは、これ一回だけでした。

 次に先生は、愛国主義、ナショナリズム、ショーヴィニズムの違いについて考えてみようといいました。ぼくには、お手上げでした。でも教科書の一部を読むことから、生徒たちがそれを理解していきます。

 先生も、うまく生徒の意見を誘導していきます。

 愛国主義が国を愛し、自分の国のためにつくそうとする考えだとわかってきます。ナショナリズムは、国家という共同体において民族意識が入り、他の民族との違いから独立を求めていく考えだとわかります。そしてショーヴィニズムは、ナショナリズムをさらに攻撃的にして、自国や自民族の優越性を意識して、他を排斥するようになる考えだとわかります。

歴史の授業後、全員で記念撮影

 ぼくには、12年生の生徒には難しすぎると思えてなりません。この点について、授業後にヒンリクス先生と職員室で話すことができました。

 職員室といっても、日本の職員室と違って、先生個人の机はありません。大きな部屋に、大きな机がいくつか並んでいます。先生たちがコーヒーなどを飲んで、授業の準備をしたり、他の先生たちとおしゃべりをしています。談話室という感じでした。

 ヒンリクス先生は、教育カリキュラムには生徒にどういう能力を身につけさせるべきかしか、指定されていないといいます。能力といっても、知識ではなく、考える能力だといいます。

 12年生は来年春になると、大学入学資格を取得するための試験を受けます。試験は、各高校(ギムナジウム)で学校の先生が行ない、成績も先生がつけます。ドイツには、全国統一試験や大学での入学試験(ただし、芸術系の大学を除く)というものがありません。

 大学進学を希望する者は、自分の希望する大学に必要な書類を提出し、大学はこの大学入学資格試験の成績から、受け入れる学生を選びます。

 大学入学資格試験は学科毎に毎日行われ、メインは学科当たり6時間の筆記試験です。試験の課題は、考えて書かなければならない論文のようなものです。

 「そのためには、授業でこれくらいのことをしなければ大学入学資格は所得できません」

 ヒンリクス先生は、当然のようにいいました。

(2018年9月14日、まさお)

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