考える授業(1)

 福島県から高校生が、8月前半ドイツにきていました。震災体験について語るのと、ドイツの高校生と交流するのが目的でした。ぼくはその高校生に付き添って、ドイツのギムナジウムの授業に参観しました。

 授業体験したのは、ドイツ北西部オルデンブルクにあるヘルバルト・ギムナジウム。ギムナジウムとは、大学進学を目的として5年生ないし6年生から12年生ないし13年生まで学ぶ中等・高等教育施設のことです。

 ぼくが参観できた授業は、11年生と12年生の政治経済、11年生の歴史、12年生の美術でした。授業は、間に休憩を入れて45分の授業2コマからなります。

 その中から、ドイツの授業の実態を示す事例をいくつか紹介したいと思います。

 11年生の政治経済のテーマは、7月にあったヨーロッパ最大の格安航空会社ライアンエアのパイロットが行ったストライキでした。それに対して、ドイツの高校生たちはどう思ったのでしょうか。

 シールケ先生がまず、ストライキをした背景について生徒に質問します。教室のあちこちで、生徒の手があがりました。

 労働条件がひどいからとか、賃金が安すぎるからと、生徒が答えます。

 ドイツの生徒たちは、ストライキに対してどう思ったのでしょうか。

 労働条件や賃金を改善すべきなのだから、ストライキをするのは仕方ないという意見がでます。格安チケットを目玉とするビジネスモデル自体にも問題があるという批判が出ました。安いチケットを買う消費者側にも疑問があるとされました。また、格安チケットで乗客数が増え、環境が汚染されるのも問題という意見もありました。

生徒は人さし指で挙手する。黒板の上が風刺画。

 次に、先生は一つの風刺画をスライドで黒板の上に映す出しました。風刺画では、地球のような丸い魚が描かれています。魚の前には、「環境」とうことばが手書きで書かれています。口から何かを出しているようにも見えます。その風刺画の貼られた掲示板の前には、男性が一人立っています。

 この風刺画は、何を意味するのでしょうか。生徒たちが競うように手を上げて、それぞれの解釈を述べます。

 しかし、先生はそれについて何もコメントしません。そして、1枚のプリントを配布しました。プリントには、ジーンズができるまでの一連の生産・製造・流通ルートがスケッチされています。その右横に、ドイツの繊維産業と自動車産業の雇用数の推移を示す棒グラフが並んでいます。

 シールケ先生は、ジーンズの生産・製造・流通ルート一つ一つを生徒たちに追わせていきます。生徒たちは、ジーンズ一本くるのにいかに世界中の人たちが関わっているかを知ります。

 そして、右側にある2つの棒グラフを見ました。ドイツでは、繊維産業の雇用数が毎年減少し、1960年代に100万人近くあった雇用がもう10万人程度になってしまっています。それに対して、ドイツの主要産業である自動車産業では雇用数に大きな変化が見られず、雇用数は100万人近くを推移しています。

 グローバル化が進むにつれ、ドイツの繊維産業において雇用が喪失されてきたことがわかります。

 どうして、この違いができたのでしょうか。

 この問題はについては時間がないので、次の時間に回されました。でもジーンズの問題から、ジーンズがグルーバル化なしにはもうできないことがわかります。

 風刺画が、それを皮肉っているようにも見えます。ある生徒が、風刺画がグローバル化で環境が汚染されていることを警告しているのだといっていたのが思い出されました。

 ドイツの授業を体験した福島県の高校生にとって、ドイツの生徒たちが競って自分の意見をいおうとしているのに、とても刺激を受けたようでした。自分の意見をいうことの大切さを学んだと思います。

 先生が生徒を指名して意見をいわせるのではなく、生徒自らが意見をいおうとするのは日本ではありえない、という声が福島県の高校生からありました。

 この点について、シールケ先生とも話しました。先生によると、先生が権威的に生徒を指名するのではなく、生徒の意見、能力を引き出すのが先生の役割なのです。

 ドイツの教育が生徒が自分で考えることに重点を置き、反権威主義的に行われているのだと感じます。

(2018年8月24日、まさお)

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