2017年3月14日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 1章記事
電源が違っても電気は電気

ぼくは、再生可能エネルギーだけの電力を供給してもらっています。しかし、わが家に接続されている電線は一本しかありません。再生可能エネルギーで発電された電力は、どうやってわが家にまで供給されるのでしょうか。


わが家に供給されるのは、電源が何であろうがすべて同質の電気です。送電線が一本しかない以上、供給される電気に違いはありません。再生可能エネルギーの発電施設から直接わが家にまで送電線を引き込まない限り、わが家に供給される電力が再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力だと確実に保証することはできません。


発電施設で発電された電力は、石炭であろうが、原子力であろうが、あるいは再生可能エネルギーであろうが、すべて送電網(系統)に送り込まれます。そこからさらに配電網を通って、工場やビル、商店、個人住宅に供給されます。送電網と配電網は、発電された電力を集めるプールのようなものです。そこに入ってしまうと、もう電源を区別することができません。プールには変電所があるので、発電された後の高圧電力は一般家庭でも使えるように低圧電力に変換されます。たとえある発電施設で発電できなくても、プールに十分な電力があれば、停電する心配もありません。


自由化前は、大手電力会社毎に供給エリアが決まっており、必要な時にだけ電力会社間で電力を融通していました。特に日本では、東京電力や関西電力など大手電力会社は会社間でほとんど電力をやり取りしていませんでした。日本の自由化前には、大手電力会社毎に一つのプールがあったといっても過言ではありません。それが、自由化とともにプールが一つになります。


送電構成図
電力供給システムの構造(イラスト:たなかゆう)

一旦プールにまとめられた電力が供給されるだけなのに、どうしてわが家に再生可能エネルギーで発電された電力が供給されたことになるのでしょうか。


答えは、こうです。


再生可能エネルギーに特化したグリーン電力小売事業者であれば、それほど問題はありません。小売事業者が契約した顧客への総電力供給量と同じ量のグリーン電力を購入して、その電力が送電網に給電されたことが証明できれば、グリーン電力が供給されたことにします。


再生可能エネルギーだけではなく、火力や原子力で発電された電力商品も販売している小売事業者の場合も、基本は同じです。電力を供給する小売事業者の帳簿の上だけで電源を区別します。小売事業者とグリーン電力供給契約を結んだ世帯全体に供給された電力量が、小売事業者が購入したグリーン電力量と帳簿の上で一致するか、あるいは後者のほうが前者よりも多ければ、グリーン電力が供給されたことにします。


ただ、グリーン電力の需要に十分なグリーン電力が常に送電網、配電網にある必要はありません。年間の電力量として帳簿の上で辻褄が合っておれば、それでいいとします。それをもって、グリーン電力が「物理的に」供給されたとします。


ぼくが契約している小売事業者の場合、毎年年末の締めになると、同社で供給した年間の総グリーン電力量と購入した年間の総グリーン電力量が同じであることを示す書類を送ってきます。このように、年間単位でグリーン電力の購入量と供給量が一致しておれば、グリーン電力が「物理的」に供給されたことにします。


電力小売り自由化後すぐにグリーン電力に切り換えた時、ぼくもそのことを知りませんでした。そのため、どうやって電源が再生可能エネルギーだと消費者にわかるようにするのかと、供給先の小売事業者に電話で問い合わせました。その時の返事は、「わからない」でした。当時は、まだそういう状況でした。それでもグリーン電力を商品メニューに載せていたのですから、今から思うと何といいかげんだったのかといわざるを得ません。


グリーン電力の年間購入量と供給量が帳簿上辻褄が合っても、グリーン電力が常に供給されていたという保証はありません。グリーン電力の発電量が少ない時間帯には、その他の電源で発電された電力が供給されていた可能性もあります。しかし年間全体の電力量で整合性があれば、それでいいとします。


1998年の自由化直後、ドイツの消費者全体の約4%が再生可能エネルギーによるグリーン電力商品を選んだといわれます。その当時、グリーン電力の発電量は年間発電量全体の4%程度でした。それが今、約32%になっています(2016年末時点)。ドイツでは現在、時間帯と天候によってはすべての電力需要をグリーン電力だけで満たしている時間帯が増えてきました。電力需要の少ない夜間に風が吹いて風力発電量が増えると、その他の電源で発電された電力は不要になります。


(2017年3月14日掲載)

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