日本の新しい「エネルギー基本計画」に、「プルトニウム保有量の削減に取り組む」という文言が入ることになった。
これは、日本がプルトニウムを保有することを懸念してきた米国が、日米原子力協力協定が自動延長されるのを機により圧力をかけてきた結果ではないかと見られる。
日本では、核物質や核廃棄物の保管、輸送における監視、安全体制がドイツから見ても驚くほどにずさんだ。テロ対策もテロの危機にさらされているヨーロッパに比べると、格段に甘い。この状況では、いつ何時核兵器を製造できるプルトニウムがテロリストの手に渡ってもおかしくない。
もう一つは、核不拡散と朝鮮半島の非核化の問題だ。プルトニウムの民生利用とはいえ、国際的には再処理から手を引いている。その中で、非核保有国の日本が依然として再処理に固執してプルトニウムを保有するのは、核保有を目論む国に対して説明がつかない。再処理が経済的ではないことがはっきりしているが、納得できないと思う。
北朝鮮の核保有を断念させ、朝鮮半島を非核化するにも、隣国日本がプルトニウムを保有していては、大きな障害となる。
こうした世界の安全保障上の問題を考えると、米国の懸念ももっともな話だ。
今日、日本の再処理を容認する日米原子力協力協定が自動延長された。その下で、日本はプルトニウムを削減するというのだ。
日本政府と電事連からすれば、増殖炉の目処が立たない中、プルトニウムを使うMOX燃料の製造と利用を進めたいという思惑だろう。
MOX燃料については、そのために再処理と使用済みMOX燃料の処分に莫大なコストがかかることがはっきりしている。それでも、それに固執する日本政府と電事連には、経済性の問題から議論しても無理だと思う。
現在、MOX燃料を使っているのは日本とフランスだけだ。ドイツは、70年代末からMOX燃料を導入してきた。だが、90年代はじめに増殖炉と国内での再処理を断念。脱原発のプロセスにおいてMOX燃料の利用を放棄した。再処理によって残ったプルトニウムは、高レベル放射性廃棄物と一緒に最終処分される。
日本は、MOX燃料によってプルトニウムを削減するといっても、原発を簡単に再稼働できる状況にない。それでは、MOX燃料を使える原子炉がないではないか。さらに、日本の保有するプルトニウムは古くて崩壊が進んでおり、そのままMOX燃料に使えるのかどうか甚だ疑問だ。
それでは、日本の保有するプルトニウムは減らない。使用済み燃料を再処理すれば、プルトニウムがさらに増えるだけだ。
日本政府が本気で「プルトニウム保有量の削減に取り組む」なら、再処理を止めるしかない。それが、第一歩だ。
ドイツの事例からすると、それは同時に、脱原発に向けて歩きだしたことになる。原子力利用が最終的に追求する核燃料サイクルを断念することになるからだ。日本政府には、そのつもりは毛頭ないと思う。でも「プルトニウム保有量の削減に取り組む」には、それ以外に方法はない。
(2018年7月17日) |