2018年6月11日更新 − HOME − 再エネ一覧 − 記事
ドイツのFIT制度、入札で競争論理を取り入れ:
(1)改正の概要

ドイツでは、再生可能エネルギー法が再生可能エネルギーで発電された電気の固定価格買い取り制度(FIT制度)を規定している。それを大幅に改正する改正法が、2017年1月から施行している。


2017年法の一番のポイントは、電気を売買する固定価格を国家が規定するのではなく、固定価格を規定するに当って、市場の競争論理を取り入れるために入札制度を導入したことだ。入札制度の導入については、すでに2014年改正法で導入が規定されていた。だがそれを具体化させるため、これまでは入札制度をどういう形にするか、パイロットプロジェクトで試験的に行なわれてきたにすぎなかった。2017年法の施行をもって、入札制度が本格的に取り入れられることになる。


ドイツ政府の説明では、再生可能エネルギーの総発電量に占める割合が30%を超えたことから、再生可能エネルギーを促進してきた当初のFIT制度の役割が果たせた、これからは市場論理に任せて再生可能エネルギーを促進するということだ。


入札制度の導入はEU指令に基づくもので、このまま国が電気の買い取り価格を規定していては、欧州委の判断と欧州司法裁判所の判決に基づいて国による間接的な過剰補助と見なされ、ドイツはEU指令を国内法に取り入れざるを得なかったともいえる。


ただ、ドイツの国内法はEU指令よりも入札制度を導入する範囲を拡大したり、年間に新規拡大する発電容量を制限するなど、いろんな点でEU指令よりも厳しくして、再生可能エネルギーの拡大に歯止めをかけるものとなっている。


風力発電と太陽光発電では、総出力750kWより大きい施設から入札制度で電気の買い取り価格を規定する。ただ洋上風力発電は別個に取り扱われ、入札制度は2021年から導入される。この条件では、陸上風力発電では新規建設される施設がほとんど入札の対象になる。それに対して太陽光発電では、メガソーラーが入札の対象になり、一般家庭の屋根に設置されるソーラーパネルは入札の対象とはならない。


バイオマス発電(ドイツはバイオガスが中心)では、出力150kWより大きい施設から入札制度の対象となる。


もう一つの改正のポイントは、入札で新規に設置されることになる発電施設の年間総発電容量に制限が設けられていることだ。それによって、発電施設が無謀に増えないように管理される。頭にキャップをかけて、再生可能エネルギーの拡大にブレーキをかけるといってもいい。


陸上風力の年間発電容量は、2017年から3年間が毎年2800MWに、それ以降は2900MWに制限される。太陽光発電は、入札対象を毎年600MWとし、毎年2500MWの発電容量が増加することを目論むとしている。バイオマスは、2017年から3年間が毎年150MW、それ以降の3年間は年間200MWとしている。


入札は年に3回か4回行なわれ、安く応札した事業者から順次入札対象の発電容量に達するまで建設権を得る。入札で決まった買い取り価格は、発電事業者が売電する時の最低価格となる。発電事業者が電力市場の取引で直接それ以下の価格で売買することになっても、その最低価格が保証される。また、発電事業者は電力市場において最低価格以上の価格で電気を販売することもできる。


送電事業者に売電した場合は、送電事業者が電力卸売市場でいくらで取引しようが、発電事業者はこの最低価格で取引することが義務付けられる。


2017年の具体的な入札状況については、今後何回かに分けて連載することにする。


(2018年5月31日)


ドイツのFIT制度、入札で競争論理を取り入れ
(2)陸上風力発電の状況 (2018年6月02日)
(3)市民発電はどうなるのか? (2018年6月04日)
(4)落札した市民発電の事例 (2018年6月09日)
(5)太陽光発電の状況 (2018年6月11日)
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