電気パルチザンが誕生

 ミヒァエルさんら市民グループは、電力会社に頼っていてはどうにもならないと思った。自分たちで行動するしかない。

 電気メーターは自力で探し、他の都市電力公社から手に入れることができた。市民グループは電気メーターを希望する住民に、電気メーターを毎日見る習慣をつけようとアドバイスした。すると、地元の電気屋さんが省エネタイプの家電製品を割引販売するようになった。

 その結果、はじめの一年間で参加者平均、20%電気消費量を削減することができた。ほぼ半減させた家庭もあった。

 こうした市民の動きに、地元の配電会社は黙っていなかった。配電会社は突然、町との公共道路と土地の使用契約を事前に20年延長してもらえれば、使用料を事前に引き上げることに同意すると町に申し出てきた。

 ドイツでは、消費者に電気を供給する配電網は、公共の道路と土地の地面に敷設されている。配電会社は電気を各家庭に供給するに当たり、その公共の道路と土地を使用するために20年毎に自治体と使用契約を結び、消費者から送電網使用公課を徴収している。シェーナウでは、その使用契約が1994年末で切れる。配電会社は市民の活動に危機感を抱き、先に手を打ってきたのだ。

 ミヒァエルさんらはそれに対して、配電会社との対話を求めた。シェーナウを電気供給の将来像を試験するための特別区域にできないだろうかと、会社側に持ちかけた。しかし会社側は、市民の要望に耳を傾けようとしなかった。配電会社のバックには、原子力発電する大手電力会社がいる。シェーナウが起爆剤となって、全国で同じような市民活動が広がっては困るのだ。

 原子力発電された電気は使いたくない。それを実現するにはどうすべきなのか。市民たちは、いろいろ議論を重ねてきた。その第一歩として、1990年年11月、分散型小規模発電を進めるゲデェア社(Gedea、Gesellschaft für dezentrale Energieanlagen mbH)を設立した。同社は小型のコジェネーレションシステムを運用するほか、再生可能エネルギーを利用することを目的とした。

 配電するため、公共道路と土地を使用する権利を早く得てしまおうという配電会社の思惑に対抗するには、どうすべきなのか。市民たちは、地元の配電網を買い取って自治管理し、自分たちの望む電気を供給できるようにするしかないと思った。そのため、 ゲデェア社設立から1カ月もたたないうちに、配電網を買い取るための会社も設立した。

 市民たちは、配電会社に対抗して公共の道路と土地の使用権を自ら取得しようとした。市民グループの活動はメディアでも注目され、「電気パルチザン」と呼ばれるようになる。

 市民たちは、配電網を買い取るための資金集めをはじめた。誰にでも配電できるわけではない。市民企業であっても、配電の技術的な能力と知見が要求される。専門家の支援を得て、技術コンセプトも作成した。

 しかし町議会は1991年7月8日、7票対6票の僅差で配電会社のオファーを受け入れることを決議した。

(2018年7月19日、まさお)

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