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2018年5月08日掲載 − 放射能汚染
福一原発事故から7年(5)
− 汚染土壌の処分 − 
多量な汚染土壌はどうするのか?

たとえ避難指示が解除されても、「プレコンバック」といわれる黒いバックがあちこちに山のように保管されています。放置といっていいくらいです。プレコンバックには、放射能に汚染されたガレキや汚染された土壌などが入っています。除染作業によって回収された除去土壌、除去廃棄物などです。


これらは、放射性物質で汚染された廃棄物です。


汚染廃棄物は、汚染が漏れないように処分されなければなりません。しかし、それを最終処分する施設がまだありません。そのため、最終処分場ができるまで、それを中間貯蔵しておかなければなりません。その中間貯蔵施設が、事故原発を囲むような形で帰還困難区域の大熊町、双葉町にできています。現時点では、最長30年間中間貯蔵するとされています。


ただ、その量は生半可ではありません。最大2200万平方メートルあると推計されています。これだけたくさんの汚染廃棄物をどう処分すればいいのでしょうか。


上の写真は、浪江町にある焼却設備です。ここでは、その北に位置する南相馬市の一般家庭から排出されたゴミも焼却されています。汚染地域の家庭で排出されるゴミも、汚染されている可能性があることを忘れてはなりません。


汚染されたゴミを焼却するには、特殊のフィルターを装備していないといけません。それでも、安全だという保証はありません。また、残った灰には放射性物質が含まれています。灰も、安全に処分されなければなりません。


でも土壌は、焼却しても容量が減りません。そのまま、処分するか、容量を減らすためのその他の方法が必要です。


そこで、考えられたのが汚染土壌を公共事業で再利用するということです。そのためには、土壌の汚染度に応じて、再利用していいか、だめかの基準が必要になります。


日本の環境省は、そのための土壌汚染解除基準(上限)としてセシウムで1 kg当り8000 ベクレルを規定しました。当初は、3000ベクレル/kgとすることも検討されたましたが、汚染土壌をできるだけ減量するため、最終的に8000ベクレル/kgで確定されました。


ただ日本の原子炉等規制法では、100ベクレル/kg以上のものは「放射性廃棄物」として原発敷地内で特別に管理することが求められます。ここでは、その80倍のものが一般住民の生活する環境で再利用されることになります。これでは、汚染土壌を減らすためにわざわざダブルスタンダードをつくったとしか思えません。


でも環境省は、それに対してこういってくると思います。


原子力法制化でいう放射性廃棄物は、原発敷地内など放射線管理区域で排出され、そこに止まっている廃棄物のことだ。でも、除染等で排出された廃棄物は放射線管理区域外にあり、住民の生活環境にある。そのため、原子力法制の枠外で規制が必要になる。だから、ダブルスタンダードではない。


この論理は、すでに2011年の段階でガレキを他の都道府県の焼却場で焼却処分する時にガレキを放射性廃棄物としないとした時に使われました。それが、ここでも適用されるわけです。


ただここでは、基準値が80倍になったということだけで批判すべきではありません。それは、この8000ベクレル/kgという値が土壌の汚染濃度を示すだけで、それだけでは人体に対する影響について何もいっていないからです。


汚染土の処分
環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」資料から抜粋

環境省の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」資料は、全国で汚染土壌を道路や防潮堤、海岸防災林、土地造成、水面埋立てなどの公共事業に使うとしています。その場合、右の環境省の資料に描かれているように(一番下の挿絵)、汚染土壌を覆土で遮蔽するほか、その上にさらに余裕を持たせて盛土するなどして、土が崩れても被ばく線量が高くならないように工夫するとしています。そして、汚染土壌の再利用によって人体が追加被ばくする線量限度(上限)を年間10マイクロシーベルトにするとしました。


この10マイクロシーベルト/年という基準は、廃炉によって排出された廃棄物を放射性廃棄物ではなく、一般ないし産業廃棄物として処分、再利用、リサイクルできるようにする「クリアランス基準」といわれるものです。ただ廃炉のクリアランス基準では、いくつもの放射性核種(ガンマ核種)毎に基準値が規定され、その一つでも基準値を上回ると、放射性廃棄物として処分するか、再除染して規定対象のすべての放射性核種において基準値を下回るようにしないといけません。


廃炉のクリアランス基準についても問題がありますが、それについては今度廃炉に関して書く時に問題点を指摘したいと思います。


しかし汚染土壌では、セシウムでしか規制せずに10マイクロシーベルト/年の基準を守ろうとしています。これも、ダブルスタンダードだといわざるを得ません。


環境省の検討会資料は、10マイクロシーベルト/年の基準を守るために想定されるいくつかの施工シナリオを示しています。ここでは、基準値の問題はそれでいいとしましょう。


しかし実際にそれを実施する場合に、いろいろ問題が出てきます。


右上に掲載した環境省の挿絵は、想定される汚染土壌の運搬、工事、施工例を示しています。


でもそれでは、汚染土壌の運搬と工事段階において汚染土壌が飛散して、汚染が拡散される可能性が排除できません。さらに、輸送と工事段階においてどうやって逐一放射線防護上の管理をするのか。そのずさんさは、除染段階で曝露された通りです。さらに、工事労働者の放射線防護についても、除染段階でその無管理さが明らかとなりました。


それでいて、汚染土壌の再利用では問題ない、十分に管理できるとという保証はどこにもありません。完全に管理するには、それだけの人材も必要です。


また、いくら汚染土壌を覆土し、さらにそのうえに余裕を持たせて盛土するとしても、地震でくずれてしまう心配も排除できません。また、道路などで許可される運用期間をすぎても汚染は残っています。その後処理はどうするのでしょうか。また、そこまで何十年に渡って施工図書などをどう保管、管理するのでしょうか。


環境省は、こうした問題に納得いくように説明しなければなりません。


さらに、これだけたくさんある汚染土壌をどうやって全量測定するのでしょうか。通常、土壌の汚染を測定する場合、土壌を乾燥させて撹拌し、土の汚染を均一にしてから測定します。乾燥させないで測定すると、土壌内に汚染濃度が高いところ、低いところがあります。その場合、測定点をどう規定するのでしょうか。土壌を乾燥させない限り、正確な測定は不可能です。


でも、これだけたくさんある汚染土壌をすべて乾燥させて全量測定できますか。できたとしても、どれくらいの時間とコストがかかるのでしょうか。


汚染土壌を再利用することで、施工コストもより膨らむはずです。でも、それによって発生するコストは一体誰が負担するのでしょうか。国が負担するのであれば、国民が負担するということです。それについても、環境省は明確に説明しなければなりません。


汚染土壌を再利用する問題には、これらいろいろな問題があることを知ってもらいたいと思います。


(2018年5月08日)


福一原発事故から7年
(1)避難指示区域 (2018年4月29日)
(2)避難指示解除 (2018年4月29日)
(3)食品の放射能汚染 (2018年4月30日)
(4)汚染地域での農作業 (2018年5月03日)

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