2017年4月05日掲載 − HOME − エネルギー選択宣言一覧 − 8章記事
2)水素自動車/燃料電池車

水素を燃料とする自動車には、燃料電池で発電して電気で動く燃料電池車と水素を直接燃焼させる水素自動車があります。水素はたとえば、水を電気分解することで製造します。そのためには、電気が必要です。その電気も、再生可能エネルギーで発電されたグリーン電力でないと、燃料電池車、水素自動車が再生可能エネルギー化、ゼロエミッション化されたことにはなりません。


水素を自動車の燃料とするには、水素スタンドも必要です。水素は静電気でも着火して爆発しやすいので、水素を安全に貯蔵することが重要な課題となります。


ドイツ北東部のプレンツラウで、風力発電で発電した電力で水素を製造するパイロットプラントを取材したことがあります。小さなプラントにも関わらず、敷地の四方八方に避雷針が何本も置かれていました。カメラと携帯電話の持ち込みも、禁止されました。万一水素が漏れていた時に、カメラや携帯電話から発せられるちょっとした小さなエネルギーでも着火する危険があるからということでした。


静電気にも注意しなければなりません。化繊の洋服を着ていると、冬の寒い時に静電気が発生しやすい。ドイツでは、化繊の洋服はそれほど普及していません。それでも、自分で給油するドイツのガソリンスタンドでは、静電気で給油中に爆発する事件が起こっています。水素スタンドでは、その危険がより大きくなります。


水素自動車/燃料電池車には、電気自動車の欠点である一回の走行距離が短いとか、充電に時間がかかるなどの問題がありません。水素スタンドが全国に満遍なく普及すれば、ガソリンなど化石燃料を使う自動車と同じように使えるという利点があります。


水素には、その他にも用途があります。燃料電池で発電したり、水素をメタンガス化してガス発電に使うこともできます。メタンガス化された水素は、ガス配管網に入れることもできます。水素をそのままガス配管網に入れて、メタンガスと混合させることも可能です。


水素をどういう目的で使うのが適切で、使い勝手もよく、効率がいいのか。十分に検討されなければなりません。その利用方法によって水素の需要が十分に発生するのかどうかということも、重要なポイントになります。十分な需要がないのに、再生可能エネルギーで発電された電力で水素を製造するのは、効率がいいとは思えません。


電気自動車で自動車の需要を十分に満たせるのであれば、水素を燃料とする自動車は必要ありません。あるいは、水素自動車/燃料電池車のほうが将来の自動車として適しているのか。それとも、自動車に対する需要を満たすには、電気自動車も水素自動車/燃料電池車も、あらゆる技術が必要になるのか。この辺りがまだわかりません。


それぞれの可能性を維持して試しながら、どの方向に向かうのが適切なのか。現在は、その進展状況を見ている段階です。いずれの利用方法にも、それぞれ長所や短所があります。また、新しい自動車に対する市民のアクセプタンスも必要です。ぼくたち市民も、市民にとってどの利用方法が適切なのか、はっきり発言していきたいと思います。


(2017年4月05日掲載)

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