日本では、再生可能エネルギーは高いといわれています。しかし、実際にはそうではありません。再生可能エネルギーには、燃料費やメンテナンス費などのコストがほとんど発生しません。これらのコストは、専門的に「限界費用」といわれます。電力の取引価格は通常、この限界費用をベースに決まります。限界費用のない再生可能エネルギーが燃料費などのかかる他の電源より安いのは、当然だといわなければなりません。
石炭火力や原子力で発電された電力は最低限必要なベースロード電力として使われ、常に一定の電力を供給しています。夜間、再生可能エネルギーの発電量が増加してベースロード電力をカバーできるようになると、本来ベースロード電力を供給している石炭火力や原子力で発電された電力と競合します。
その時まず、電力取引市場では安い卸電力が買われます。限界費用のない再生可能エネルギーで発電された電力です。他の電源に勝ち目がありません。石炭火力や原子力で発電された電力が余ります。
石炭火力発電所や原子力発電所の運転を停止して、後で必要な時に再稼働すると莫大な費用が発生します。運転を停止しないまま、余剰電力をゼロ価格やマイナス価格で引き取ってもらうほうが安く上がります。そのためドイツでは現在、原子力と石炭火力の大型発電施設を有する大手電力会社は、発電事業ではもう利益をあげることができない状態になっています。
それにも関わらず、ドイツではなぜ電気料金が高くなっているのでしょうか。
それは、再生可能エネルギーで発電された電力の固定価格買い取り制度(FIT)があるからです。再生可能エネルギーによる発電量が増えてその取引量が増えていくと、表2が示すように、電力取引市場では卸電力の取引価格(電力調達価格)が下ります。その分、FIT制度で規定された固定価格との差が大きくなります。再生可能エネルギーの総発電量も増えるので、それだけFITの負担が大きくなります。その負担増が、電気料金を高騰させています。
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