ドイツでは今、高レベル放射性廃棄物の最終処分候補地の選定がどうなっているのか、あまり目に見えない。そこでドイツの最終処分問題が忘れられないように、少しドイツが最終処分問題でどうしてきたのかを時系列的に追っておきたい。
旧西ドイツは1970年代後半から、東西ドイツ国境線北部のゴアレーベンに中央処分施設を設置する意向で、計画を進めてきた。そのために、その地域の地下層の岩塩層が最終処分に適するかどうかの調査が続けられてきた。
しかし住民の反対が強く、ゴアレーベンはドイツの反原発運動の中心的な存在になっていった。1998年社民党と緑の党の中道左派政権になると、2000年に一旦調査を中断。その後政権交代して2010年に、調査を再開する。
2013年、住民参加を前提とする最終処分地選定法が制定された。その後2014年に、連邦議会内に超党派で最終処分委員会が設置され、最終処分地を選定する手法について審議が続けられ、2016年その諮問案が提示された。
最終処分地選定法はそれにしたがって2017年に改正され、現在ドイツの最終処分地を選定する『バイブル』のようになっている。
ドイツでは最終処分地選定法にしたがい、岩塩層、花崗岩層、粘土層の三つの地層が最終処分候補地として調査されなければならない。
その後、ゴアレーベンの岩塩層の適性が当初、科学的に十分に検証されていなかったことが判明する。その結果、ゴアレーベンを白紙に戻す条件で、2017年に改正された最終処分地選定法にしたがい、最終処分候補地の選定が本格的に開始される。
最終処分候補地として可能性のある地域が、2020年9月に中間発表された。ドイツ全国の54%の地域にもまたがる。その段階でゴアレーベンは適さないとして、候補地から除外された。現在その可能性のある地域に関して、文献調査によってそれをさらに現場で地上調査を行う10の地域に絞り込む作業が行われている。
その作業は今のところ、2027年までに終了する見込みだ。その後現場地上調査が行われた後、ボーリング調査を行う地域が2つに絞られ、ボーリング調査の結果から最終候補地が勧告される。
最終的には選定機関の勧告にづいて連邦議会(下院)で審議、決議され、最終処分地が確定する。その際各党は党議拘束を外し、各議員の判断に委ねる見込みだ。
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最終処分候補地選定プロセスの中間報告書で最終処分候補地に挙げられた地域。青と紫の地域が粘土層、緑と薄青の地域が岩塩層、肌色の地域が花崗岩層(出典:Bundesgesellschaft für Endlagerung(ドイツ最終処分機構)) |
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最終処分地を最終的に確定するには、地元住民のアクセプタンスを得ることができるかどうかが重要な課題となる。そのためには、最終処分候補地の選定プロセスがフェアで透明であることが求められる。
住民が選定プロセスがおかしいのではないかと疑問や不満を抱いた場合に備え、国家随行委員会(NBG)という組織が法的に設けられた。NBGは、最終処分候補地の選定プロセスを監視する行政機関である放射性廃棄物処分安全庁(BASE)と地元住民(社会)を橋渡しする。最終処分候補地を選定する国と住民の仲介役ということだ。最終処分地選定におけるオンブズマンのようなものだといってもいいと思う。
NBGは最終処分地選定に関わるプロセスを監視し、プロセスに疑義が発生したり、地元住民から正当な理由で異議が出た場合、選定プロセスのやり直しを求めることができる。最終処分地の選定プロセスをやり直す可能性を設けたのは、ドイツの選定プロセスの核心でもある。
ただ選定プロセスはまだ、選定のための文献調査段階で、住民には進捗状況がはっきりとは目に見えない。候補地が絞られてこないと、住民が選定プロセスに関心を示さないのも大きな問題だ。
最終処分候補地の選定に関して、住民の関心をひきつけるため住民代表がBASEの元でいろいろ催し物を企画している。しかし住民の関心はまだ、低いといわなければならない。そのためNBGの役割も、あまりはっきり状況となっている。
(2024年3月22日) |