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2005年11月13日掲載 - 科学
カードが超小型実験室に
(2004年12月16日)

クレジットカード大の小さなカードの上に、血液を少したらすだけで、一度に100以上の検査が同時に行われる。患者がインフルエンザにかかっているのか、単なる風邪か、医師にはすぐに結果がわかる。病気の進行度は?、そして患者に一番効く薬は?、その適量は?。。。すべて、カードが医師に教えてくれる。そんな時代がくるのは、そんな遠い夢のことではない。


この11月に発表された、今年のドイツ大統領「ドイツ将来賞2004」に、ドイツの研究開発チームが開発した、世界初といわれる電子DNAチップが選ばれた。受賞したのは、フラウンホーファー・シリコン技術研究所のヒンチェ(Hintsche)とジーメンス社のグムブレヒト(Gumbrecht)、半導体メーカ・インフィニオンのテーヴェス(Thewes)の3氏。3氏それぞれの研究開発チームが共同で開発したのが、この電子DNAチップだ。


DNAチップとは、スライドガラスやシリコンチップ上に一本鎖DNA(DNA配列断面)を高密度に固定化したもの。血液などの試料をのせると、試料中のDNAのうち、DNAチップ上のDNAと相補性のあるDNAが結合して塩基対を形成し、二本鎖DNAとなる。それで、どういう組み合わせの二本鎖DNAが形成されたかがわかれば、それを解析するだけで、いろいろな診断が可能となる。


問題は、形成された二本鎖DNAをどう識別するかだ。現在の方式では主に、二本鎖DNAが形成された時に発色するように、チップ上の一本鎖DNAに蛍光色素をつけておいて標識し、結合して二本鎖になった時に発せられる電気信号によって蛍光が発せられるのを光学的に分析している。そのためここでは、蛍光標識と光学分析の2つの工程が必要となる。


しかし電子DNAチップでは、人間の爪ほどの大きさしかないシリコンチップ上に、金(ゴールド)の電極を高密度に並べ、その上に一本鎖DNAをそれぞれ分離した状態で固定化する。DNAが結合して二本鎖になった時に発せられる電気信号はごく弱いものであるため、その場で測定する。そのため、チップ上の電気信号を測定するセンサーの真下にトランジスタを入れて、電気信号を増幅する。こうして、その場で電気信号をキャッチして測定し、信号が分析される。


今回受賞した研究者らが開発した電子DNAチップの一番の特徴は、このチップを標準の半導体加工技術(正確には、総補正金属酸化膜半導体(CMOS)の加工技術)で作製できるということだ。つまり、低コストで電子DNAチップが製造できるというわけ。そのため、大きな需要が見込まれるほか、それだけ汎用性が高くなる。


受賞した研究者らによると、彼らの研究開発の成果には決して新しい技術が含まれているわけではないという。すべてが、既存の技術なのだと。要は、それをどう組み合わせるかがポイント。超。。。超。。。難問のパズルを組み合わせるのに成功したようなものとか。


SARSやBSEに感染しているかどうかなども、この電子DNAチップで判定できるようになるのは間違いない。食肉中に抗生物質が残っていないかどうかも、簡単に検査できるようになるという。電子DNAチップのデータを携帯電話で送信できるようにすれば、チップは必ずしも専門家によって操作される必要はない。データは、オンラインで受信した専門家に解析してもらえばいいだけの話だ。ただそうすると、ちょっとした病気であれば、医師に診てもらう必要もなくなるのか!?


21世紀は、知識集約型社会になるといわれる。これまで人類が蓄積してきた知識を小さな機械に集積できるようになって、たくさんの新しい可能性が生まれるのだという。電子DNAチップの場合も、バイオテクノロジーの研究開発によって得られた遺伝子情報がその基盤となって、たかが1枚のカードが実験室以上の役割を果たすようになる。これは、医学的にはたいへんな進歩だ。


だが、こうした知識集約型社会では、電子DNAチップのような高度技術を開発、利用できる人たちと、単にそれを操作するだけの人、操作もできない人、さらに高度技術の恩恵にも授かれない人の能力に格段の差が発生し、それがそれぞれの生活レベルに大きく反映されるようになると思われる。現在でもすでに、パソコンを使える、使えないかは社会的に見ると大きな差だ。知識集約的社会が進展すると、こうした差が益々大きくなる。技術開発を進めながらも、”無知識層ゲットー”などができないようにするには、われわれは今、何をすべきなのか。。。(fm)



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