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2005年11月13日掲載 - 環境
核燃料サイクル維持への疑問
(2004年11月23日)

日本の原子力委員会は、使用済み核燃料を再処理して燃料を再利用する核燃料サイクル政策を維持することを決定した。核燃料サイクルとは、核燃料となるウランの採鉱から、核燃料を原子炉で使用した後の放射性廃棄物の処理処分までの一連の流れのことをいう。ここで核燃料サイクルを維持するかしないかは、使用済み核燃料を再処理するかしないかということ、つまり、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、MOX燃料として再使用するか、使用済み燃料をそのまま地中に埋設して直接処分(使い捨て)するかが問題となる。


ドイツでは90年代はじめに転機

この問題で、日本は再処理実施を決定したわけだが、ドイツは90年代はじめに核燃料サイクルの維持に関して大きな転機を迎えている。ドイツはそれまで、国内再処理施設(ヴァッカースドルフ)とMOX燃料を利用する高速増殖炉(カルカー)の建設を進めていた。しかし90年代はじめに、国内での再処理と高速増殖炉建設の放棄を決定、再処理を国外の再処理工場(フランスとイギリス)に委託して、MOX燃料を国内にある既存軽水炉の一部だけで使用することとした(これは、日本のプルサーマル計画に相当)。さらに、94年7月の原子力法の改正によって、それまで再処理が義務付けられていた使用済み核燃料を再処理せずに直接処分する道も開き、再処理するか、直接処分するかを電力業界の裁量に委ねた。


ドイツは2000年6月、原子力発電から段階的に撤退することで政治決定したが、この時も再処理をいつ止めるかでなかなか決着が付かず、最終的には電力業界との合意で、2005年7月からは再処理を一切行わないことになった(法的にも規定)。


ドイツは日本の今回の決定とは全く逆の方針を決定してきたわけだが、ドイツの方針決定の根拠はどこにあるのだろうか。


そこでまず、ドイツでは再処理するのと、直接処分するのとでどれほどコストに差が出るのか、比較検討してみよう。再処理によって発生する増額の推定値を再処理の主要要因だけで検討してみることにする(数値は、2000年1月のエコ研究所とヴッパータール研究所のスタディによる)。


1)再処理費用:

旧契約(96年頃まで):2408 - 4778ユーロ/kgHM  ..... 1a)

新契約(05年6月まで):2410 - 4530ユーロ/kgHM  ..... 1b)

これは、電力各社が使用済み核燃料の再処理のために、フランス・コジェマ社の再処理工場ないしイギリス・BNFL社の再処理工場と契約した単価を示している。05年6月までには、契約で定められた再処理量がほぼ処理される見込みだ。


2)再処理によって発生する放射性廃棄物の処分費用(容器費用含まず):

299 - 1058ユーロ/kgHM  ..... 2)

再処理によって発生する放射性廃棄物は、英仏からドイツに引き取られ、中間貯蔵後に地中に処分される。ここで問題となるのは、放射線量の高い高レベル放射性廃棄物で、ガラスで固化されてドイツに返還される。前述の処分費用のうち、高レベル放射性廃棄物の処分費用は256 - 767ユーロ/kgHMで、再処理によって発生する放射性廃棄物の処分に必要な費用のほとんどを占める。


3)放射性廃棄物容器費用:?

最終処分するためのコンディショニング等事前処理費用:?


4)MOX燃料製造までのプルトニウム保管費用:?

5)MOX燃料製造費用:

2812 - 3579ユーロ/kgHM(97年時点。年間値上げ率は約5%)

それに対し、ウラン燃料製造費用は

920 - 1176ユーロ/kgHM(97年)

であるので、その差額は

1892 - 2403ユーロ/kgHM  ..... 5)

となる。MOX燃料の製造コストは、ウラン燃料製造コストの倍以上もする勘定だ。

6)使用済みMOX燃料の処分費用:

使用済みMOX燃料では、放射線レベルがより高いことから発熱量が高く(1トン当たり2870ワットと、使用済みウラン燃料の約4倍)、中間貯蔵して冷ますのに時間がかかるほか、最終処分のために廃棄物を埋める場合、高温化を避けるためにより大きな間隔をあけて埋めるなど特別の配慮が必要となる。

そのため、使用済みウラン燃料の最終処分費が

913 - 1741ユーロ/kgHM

なのに対して、使用済みMOX燃料を処分する場合は、さらに

608 - 746/kgHM  ..... 6)

コスト高(増額)になると見られる。

後でも述べるが、日本では特にこの部分の費用と問題が配慮されていない。


再処理は高い

以上から、再処理する場合と直接処分する場合のコスト差は1a)ないし1b)と2)、5)、6)を加算することによって算出でき、再処理によって発生する増額は、

1a)の場合:5207 - 8985ユーロ/kgHM
1b)の場合:5209 - 8737ユーロ/kgHM
となる。仮に1ユーロ=136円で換算すると、1a)、1b)のいずれの場合も、1キログラム当たりおおよそ70万円超から120万円の増額となる。


増額の試算はできるだけ単純に行ったものなので、その他のいろいろな要因を考えると、まだ増額、減額しなければならない点も考えられる。しかし、だいたいの目安としては十分に活用できる数値だと思う。


ドイツが国内の再処理と高速増殖炉を放棄したのは反対運動が激しかったからだと見られがちだが、この単価比較だけを見ても、再処理がいかに高いものであるかがわかると思う。実際、政府や経済界の関係者は、ドイツは経済的な理由から90年代はじめに国内での核燃料サイクルの確立を断念し、直接処分する道を開いたのだと説明する。事実、ドイツの電力業界は90年代半ばに、再処理自体を停止することを真剣に考えていた模様だ。


原子力委員会の根拠の検討

話を日本の決定に戻そう。日本の原子力委員会が核燃料サイクル路線維持を決定した理由として、3つの根拠が挙げられている(asahi.com11月12日の記事から)。

(1)再処理は直接処分よりコストが高く経済性で劣るが、エネルギー供給の安定性や環境適合性など総合的にみて優位
(2)技術や立地地域との信頼関係などの再処理路線がこれまで進めてきた社会的財産は大きな価値がある
(3)政策変更すると立地との信頼関係が崩れ、原発運転や関係施設の計画が困難になる

  そこで以下では、これらの根拠をひとつひとつ検討してみたいと思う。

(1)再処理は直接処分よりコストが高く経済性で劣るが、エネルギー供給の安定性や環境適合性など総合的にみて優位

■ 経済性について

再処理は直接処分より経済性で劣るが、総合的にみて優位だとされている。ここで、ひっかかるのは総合的にみて優位だとされている点だ。


国内での産業空洞化が大きな問題となっている現在、なぜ経済的にみて不利な再処理が総合的にみて優位なのだろうか。再処理のコストは電力料金に上乗せされて積み立てられるので、電力料金は益々高くなる。それでは、ただでさえ電力料金の高い日本の経済立地条件をより悪化させることになる。産業界に、生産拠点を国外に移転する絶好の口実を与えているのと同じだ。もちろん、電力消費の多い産業に対して優遇措置を設けることもできる。しかしそうなれば、その分弱い中小企業や一般消費者が余計に負担しなければならないことになる。国内で雇用を維持、拡大させるためには、中小企業を支援して雇用を拡大させるのが今後一段と重要になるのは明らか。その意味では、経済的に不利な再処理を実施するのは、経済政策と雇用政策の観点からみると大きなマイナスだ。


ここでは、ちょっとひっかかっていることがある。最近になってようやく原発のコスト負担、特に核燃料を使用した後の再処理などの後処理コストが18兆8000億円になることが明らかにされた。今回の核燃料サイクル路線維持の決定は原子力開発利用長期計画を改定する枠内で協議されてきたものだが、むしろ先に明らかにされた再処理を基本とした後処理費用を確定させるためのものに思えてならない。というのは、原発のコスト問題では、これまで観察している限り、すべてのコストについて議論されているわけではない。明かにされた後処理コストは、放射性廃棄物を中間貯蔵するまでの費用しか含まれていないのだ。つまり、廃棄物を地中に埋めて最終処分する費用が含まれていない。まあ、これは最終処分計画がまだないのだから、試算のしようがないということかもしれない。さらに、原子炉の寿命は日本では40年とすることで協議されている模様だが、寿命に達した原子炉を廃炉とするためのコストが後処理コストに含まれていないことにも注意しなければならない(註)。


だから、まず再処理を維持することで決定しておいて、そのためには後処理に18兆8000億円のコストが発生することを確定させる。それで、再処理を含めた原子力発電から後戻りできないように道をつけてしまう。そして次に、その場合さらに廃炉と最終処分のコストがこれこれかかるという手順で、今後さらに時期を見て原発のコストが小出しに明らかにされていくのではないかと思えてならない。原子力発電にかかるすべてのコストをはじめから議論していては、これまで発電コストが安いとされてきた原子力発電の信用に傷がつき、原子力発電継続が疑問視されかねないからだ。


ただここでは、次のような技術上の問題がある。再処理後に製造されたMOX燃料を使用した後に残る廃棄物(使用済みMOX燃料)には、前述したように、発熱量が極度に高いという問題がある。使用済みウラン燃料や再処理によって発生する高レベル放射性廃棄物は40年から50年中間貯蔵して冷やし、その後地中に埋めることになる。それに対し、使用済みMOX燃料を同レベルの温度に冷やすには、約500年もかかるのだ。そのため、使用済みMOX燃料はかなりの高温のまま地中に埋めることになると見られる。その場合、大きな間隔を開けて廃棄物を埋めることになるため、地中には巨大な空間が必要となる。さらに、最終処分地としてはできるだけ熱伝導率の低い地層を選定しなければならない。というのは、たとえば廃棄物を埋めた地層の上に粘度層があれば、熱伝導率の高い地層では熱が粘土層に伝わって、粘土層は廃棄物の熱で乾燥し、地層に亀裂が発生する恐れが出るからだ。それでは、地層は汚染を遮断する機能を果たせなくなる。


つまり使用済みMOX燃料は、最終処分地を選定するに及んで選択の幅を極端に狭めてしまう。適切な最終処分用地を見つけることができない場合は、使用済みMOX燃料を数百年も地上で中間貯蔵しなければならなくなることも考えられる。ということは、最終処分地の選定次第で、中間貯蔵まで試算された後処理費用が大幅に膨れ上がる危険があるということだ。そうなると、こうした再処理に付随する経済的な不安定要素は、日本経済全体にとって大きな爆弾を抱えているのと同じことを意味するのではないか。


■ エネルギー供給の安定性について

エネルギー供給を安定化させるとは、発電所を継続的に運転するということだ。原発の場合、運転継続の前提となるのは、何といっても安全だ。燃料があっても、安全が確保されていないかぎり、原発は動かせない。そして、その安全は治安と技術によって確保される。


まず治安から考えよう。日本では、冷戦が終結した後に有事法制化が行われた。これは、冷戦後であっても日本の安全に重大な影響を与える事態が発生することが否定できないから、法制化されたのではなかったのか。さらに、9.11テロ事件を機に日本がテロの標的になることも十分に考えられるのではないか。こうした危険な事態が発生しやすい時期において、原発や再処理工場は絶好の標的になる。9.11事件直後、フランス政府が空軍に再処理工場の警備を依頼したのが記憶に新しい。日本政府自体が世の中危なくなったよね、といっているにも関わらず、その標的となる可能性の高い施設を維持しようとするのは、どこかで矛盾しているのではないだろうか。


次に、技術の問題だ。日本は原発の寿命を40年として考えているようだが、世界的に見ると、原発は運転後25年程度で大規模な修理が必要になるか、廃止して廃炉にしている場合が多い。原発は高経年化する毎に、運転停止の頻度が増え、その度に修理が必要となる。日本の原発もすでにこの高経年化の問題に対処しなければならない時期にきている。たとえば、東電による隠ぺいが明らかになった原子炉シュラウドの亀裂は、高経年化に起因しているといってもいい。


こうして見ると、日本の原発では今後運転停止期間がこれまで以上に長くなる可能性がある。さらに、問題となるのは電力の自由化だ。電力の自由化は電力会社間の競争を激化させ、各社はコスト削減を余儀なくされる。その場合、修理毎の投資額が大きい原発では、できるだけ修理を避けながら運転を続けざるを得なくなる。東電のケースがいい例だ。大規模な修理は無理になることも考えられる。これは、原発の安全が蔑ろにされる危険を孕んでおり、エネルギー供給の安定化の前提となる安全が確保されにくくなるのは明らかだ。さらに、経済的ではない再処理を維持するというのは、電力の自由化を推進して電気料金を引き下させようとする政府の政策と矛盾していないのか。


■ 環境適合性について

原子力発電が環境に適するとされるのは、原子力発電では地球温暖化の原因となっている温室効果ガスのひとつ二酸化炭素が排出されないからだ。確かに、地球温暖化の問題を考慮すれば、原子力発電は環境にやさしい。しかし、原子力発電が蒸気機関の原則に依存していることから、水の使用量と発熱量に問題があることは、すでに「18世紀からの遺産」で述べた。さらに、放射性廃棄物を処分しなければならない問題は、前述したような経済上の問題ばかりでなく、環境上の問題でもある。すでに述べたように、再処理は放射性廃棄物処分の問題をより難しいものとする。放射性廃棄物を地中に埋設することは、地下を汚染することだ。だから、再処理を維持することで原子力発電をより強化させるかどうかは、地上を汚染するか、地下を汚染するかの問題で、最終的に環境汚染の解決にはならない。これについても、すでに「地下層は人類の肥溜めとなるか」で述べている。


特に地震の多い日本においては、地下を汚染することは汚染が地下から地上に拡大する危険があることを意味している。核燃料サイクルにはこうした重大な問題があるにもかかわらず、どこに環境適合性があるといえるのであろうか。


(2)技術や立地地域との信頼関係などの再処理路線がこれまで進めてきた社会的財産は大きな価値がある

■ 社会的財産について

ここでは、再処理路線が蓄積してきた社会的財産として、技術と立地地域との信頼関係が挙げられている。ここで技術は、高速増殖炉の技術と再処理技術だと思われる。高速増殖炉についていえば、ドイツが90年代のはじめに建設中の高速増殖炉を臨界させないまま建設を中止した。その背景のひとつは、技術上の問題があったからだ。現在、高速増殖炉の開発を継続しているのは、フランス、ロシア、日本の3か国だけ。その意味では、非常に”貴重な試み”かも知れないが、原型炉もんじゅの運転が停止されたままとなっているなど、開発自体は未知数ではないのか。


再処理でも同じことがいえる。セラフィールドにあるBNFL社の再処理工場からの汚染がひどいこともあって、イギリスは同再処理工場の閉鎖を決定した。そのため、再処理工場を有するのは、フランス、ロシア、日本だけとなる。中国も今後、再処理事業を開始するものと見られるが、日本を除くと、再処理を行うのはいずれも核保有国だ。


ここでは、技術上の議論は避けよう。水掛け論になってしまう可能性が高いからだ。ただ、ひとつ重要な問題があることを忘れてはならない。それは、再処理技術を有することは、核兵器の製造技術を有することを意味するということだ。再処理によって、必要なプルトニウムも抽出される。だから、非核国が再処理試験を秘密裏に実施していたりすると、世界中で大きな騒ぎとなる。日本は被爆国で、非核三原則があるから安心してもらっていいと思うのは、日本の独り善がりにすぎない。筆者の友人や知人の中には、日本は再処理できる技術を持っており、あれだけ防衛費を計上している(こちらでは誰も防衛費だとは思っておらず、軍事費だと思っている)のだから、核兵器開発を行っているにちがいないとか、いやすでに核兵器を持っていて当然だと思っているドイツ人がいる。現在非核三原則が疑問視されようとしているとでもいおうものなら、「ほら、日本は核兵器を持つんだろう」といわれかねない。


日本は被爆国として、戦後約60年核兵器の廃絶を訴えてきた。だから日本が核兵器を持つはずがない、というかもしれない。しかしそれは、日本自身の思い込みではないのか。日本が再処理を実施し続ける限り、世界が日本は核兵器を持つようになる、すでに持っていると見る可能性があることを認識しなければならない。これまで日本が世界に対して核兵器の廃絶を訴え続けてきたのは、歴史的な財産だ。この財産に対する信用を維持させ、より説得力を持たせるには、日本は襟をただして実際の行動で示さなければならない。この問題について、原子力委員会はどう思っているのであろうか。


(3)政策変更すると立地との信頼関係が崩れ、原発運転や関係施設の計画が困難になる

■ 立地地域との信頼関係について

(2)において、立地地域との信頼関係は社会的財産として大きな価値がある、とされている。それで、日本が再処理政策を変更すると、立地地域との信頼関係が崩れ、日本の原子力政策の実施に問題が生じるという論理だ。ただこれは、立地地域との信頼関係が一枚岩の崩れやすいものであることを認めているのと同じだ。それもそうだと思う。立地地域は単に補助金をちらつかされて、釣られているのと同じ。地元の住民は、反対派と賛成派に分断される。住民が一番不安な安全に関しても、隠ぺい(最近では東電の問題)や偽造(最近ではMOX燃料の資料)、信じられない事故(最近では、JCO臨界事故)が続き、信頼関係など築けるはずがない。今回も、原子力発電によって発生するコストを洗いざらしにして議論せず、いまだに一部が霧に包まれたままだ。


これが、立地地域との信頼関係の実態ではないのか。そして、それが社会的財産だと評価され、脆弱な信頼関係を維持させるため、政策変更はできないという論理。ここには、国策として再処理を維持すべきかどうか積極的に議論する意気込みが感じられない。これまで、こういう政策できたから、続けますといっているにすぎないのではないか。要は、積極的に続ける意志も、政策転換して再処理を放棄すると決断する勇気もないということだ。


原発は経済にとって負担

思い付くままに、核燃料サイクル維持を決定したことに対する疑問を挙げてみた。筆者は、再処理を含めた原発維持問題は環境問題ばかりでなく、大きな経済問題だと思っている。しかし、その経済負担についてはこれまであまりに議論されてこなかった。ここでいう経済負担とは、廃炉と最終処分も含めた後処理コストの問題だ。


この問題に対処するのは、正直なところ今となってはもう遅いくらいなのだ。原発の経済負担はすぐ目の前まで押し寄せており、日本経済の行く末に大きな影響を与えようとしている。たとえばEUにおいても、今後発生する後処理費用のために十分な積立をしていない国が多いことから、すでに引当金の形で積み立ているドイツの資金を共同で前借りすることができないか、真剣に検討されたことがある。もちろん、ドイツは猛反発したが、こうした事態は原発負担の重さと緊急性を示している。


日本の対処の仕方を見ると、たくさんのことが霧に包まれている。廃炉や直接処分の問題についてはすでに述べたが、後処理コストが18兆8000億円になることが明らかにされた時も、制度として資金を蓄えるシステムが整備されている額だけが示され、実際これまでにどの程度の資金が積み立てられているのかは示されなかった。ただ、電力業界はコストの問題に関して必要なデータをほとんど把握しているはずで、それを一度に出してしまうと原子力発電が決して安いものではないことが明らかになるのを恐れている。そのため、もう後戻りできないようにするために、ひとつひとつ地盤固めをしては次のコストを明らかにしているにすぎない。もしそんな戦力的なことはしていないと否定するのであれば、電力業界は、もう原発に関してコストは発生しません、他にコストが発生すれば、自分達で負担します、と明言すべきではないのか。そうすれば、社会的財産として大きな価値のある信頼関係が築かれると思うが。(fm)


(註)日本原子力発電株式会社の試算によると、現在52基ある商用原発を廃炉するのに約3兆円必要だという。標準的な110万キロワットの原子炉で、廃炉に約550億円のコストがかかる。そのうち、日本では00年度で約9500億円積み立てられているという。

ドイツの場合、標準的な商用炉の廃炉コストは99年時点で約3億ユーロ超(約400億円超)になるものと試算されており、1基当たりの廃炉コストでは日本とそれほど大きな違いはない。産業界が廃炉コストを負担するのは約25基の原子炉で、産業界は98年末時点で約100億ユーロ(1兆4000億円)を廃炉のために積み立てていた。

しかし、研究炉の廃炉や廃炉の技術開発コストなどを含めると、原子力利用全体で廃炉がドイツ経済に与えるコスト負担は約500億ユーロ(約6兆8000億円)にも上るものと試算されている(2001年時点)。


(参考)脱原発を含めたドイツの原子力政策に感心のある方は、原子力資料情報室編の講演集「ドイツ、脱原発最新事情と安全規制」(2001年発行)を参照してください(刊行物のページへ)。


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